文部科学省から全国の教育委員会へ、特例の通知が出るようです。
小中学校で今年度中にできなかった教育課程を、次の学年に持ち越し、数年かけて学習を取り戻せ!
9月入学を推し進めてみたり、一部の県では学校を再開させてみたり…
政府の方針はブレブレで、児童生徒への負担や、教育現場の混乱なんて、全く考えてませんよね。
教育課程の網羅性
まず、「今年度中にできなかった教育課程」って言ってますけど…
5月の時点で、もうすべての教育課程が終わらないことが前提なの?
夏休みを短縮したり、土曜授業を実施したりで、ギリギリ終わらせようとする案もあったはずですが…
では「すべては終わらない」と過程して、今年度の授業をどう進めるのか?
- 教科書の順序通り、できるところまでやってみて、終わらなかった範囲を次学年へ持ち越し?
- あらかじめ削減する単元を決めておいて、今年度に減らした範囲を次学年へ持ち越し?
さあ、どっちでしょう?
中学校は圧倒的に前者になるような気がしますが…
授業内容の網羅性を考えたら、初めに削減する単元・範囲を決めてしまった方が良いように思います。
削減可能な教育課程
「中学校の教科書は、すべてが超重要単元か?」と言うと、決してそんなことはありません。
高校入試に深く関わっている範囲と、そうでもない範囲があります。
授業時間数が少ない!と初めからわかっているのであれば、大胆に削ってしまってもいいと思います。
国語
国語はあらゆる学問の基礎ですから、個人的にはあまり削ってほしくないんですが…
敢えて減らすなら古文・漢文でしょう。
中学生の古文は、現代語訳と読み比べながら、なんとなく話の内容を理解する…
文法的な解釈は求められていませんので、「勉強」と言うよりは「読書」に近い。
そのため、明らかに重要性は落ちます。
また漢文は、返り点の意味すらわかってない生徒が半数以上います。
入試直前の冬休みになっても、漢文の知識ゼロだったりしますので、この際、後回しでいいです。
数学
成績上位者にとっては、数学で削っていいところなんて、ひとつもありません。
でも、中位~下位の生徒にとっては「〇〇の利用」
これ全部、パスでいいです。
- 正の数 負の数の利用
- 方程式の利用
- 比例 反比例の利用
- 連立方程式の利用
- 一次関数の利用
これまで中学生を指導してきた実感として、この「利用」をマスターできるのは偏差値60以上の生徒のみ。
まあ、無理もありません。
文章題は国語力ですから…
国語力のない生徒に「利用」を教えても、一瞬わかったつもりになって、実はサッパリわかってません。
網羅性の観点からは、次学年に持ち越しでいいでしょう。
英語
千葉市は三省堂NEW CROWNを採用してまして…
他の出版社の教科書を使っている人には、ちょっとわかりにくいかもしれませんが、
「Project」のページは、あまり重要性を感じません。
- 有名人を紹介しよう
- 自分の夢を紹介しよう
- 自分の町を紹介しよう
やってることはポスターを作ったり、スピーチ大会をやったり、地図を読み取ったり…
「楽しく学ぶ」という趣旨にはピッタリですが、時間数の厳しい時にやるところじゃないですよ。
分散登校での小6と中3
文部科学省は「小6と中3は優先的に登校させて、1年ですべての課程を修了させたい」とも言っていますが…
いやいや、ちょっと待って!
小6も中3も、元々すべての課程、終わってません。
キッチリ終わった学年、今までにあったでしょうか…
算数・数学の単元では…
小6の「量の単位」
面積・体積・重さの換算、ここが普通にできるのは中学受験組だけ。
学校ではプリントを配って「はい、やっといてね!」で終わり。
そりゃそうです、卒業式の練習の方が重要ですから…
そして中3の「標本調査」
全数調査と標本調査のちがい、標本を無作為に抽出するなど…
表計算ソフトとも関わってきますので、将来的には重要な内容なんですが、「授業でやった!」という話…全く聞きません。
元々終わっていなかったものを、ここへ来て急に「修了させたい!」って言われても…
文部科学省は学校の実情、ことごとく無視なんですよね。
数年かけて?
で、「数年って、何年?」
曖昧な表現は、本当に勘弁してほしいです。
緊急事態宣言が出た時と同じで、期限は決めてなさそうです。
「2~3年で、普通に戻ればいいかな?」みたいなノリでしょうか。
やるなら「ハッキリ1年!」とか「次年度に!」とか、明確な基準を示していただきたいものです。
学校が再開されると、分散登校によって、より多くの教室が必要になるようです。
公民館や図書館など、学校以外の施設を活用するとも言い出してますが…
6月以降も、混乱は続きそうですね。